やさしく解説:DSSC × SQ2(スクアリウム色素)—3本の論文から
作成日:2025-10-15 / 対象:一般向け解説
まずは1分で
- **SQ2(スクアリン/スクアリウム色素)**は、赤〜近赤外の光をよく吸う金属フリー有機色素。**他の色素と“協奏(コセンズタイゼーション)”**させると、吸収のすき間が埋まり電流が増えやすいのが強みです。
- 研究では、有機色素との共増感でフレキシブルDSSCを高効率化、ルテニウム色素Z907との共増感でPCE 7.83%、一方でp型(NiO)セルでは相性に注意といった具体的な知見が示されています。
1) JH‑1 × SQ2で“幅広く光を捕まえる”フレキシブルDSSC(Org. Electron., 2018)
どんな研究?
- フレキシブルTiO₂電極に、金属フリーJH‑1と非対称スクアリンのSQ2を60:40で共増感。
- 吸収域 350–720 nmに拡大し、**Jsc 12.32 mA/cm²、Voc 0.754 V、FF 0.68、PCE 6.31%(1 sun)**を達成。
- 共増感で濃度が上がりつつ競合吸着は少ない→電流も電圧も両方向上という好結果。
やさしい解説
“赤に強いSQ2”+“青〜緑に強いJH‑1”を合わせ技にすると、太陽光の取りこぼしが減ります。柔らかい基板でも高性能を狙えるのがポイント。
参考(DOI)
Lee et al., Organic Electronics 52 (2018) 103–109. DOI: 10.1016/j.orgel.2017.10.003
2) Z907 × SQ2でPCE 7.83%(Int. J. Energy Res., 2018)
どんな研究?
- ルテニウム色素Z907(0.3 mM)とSQ2(0.2 mM)の共増感で、Jsc 21.38 mA/cm²、Voc 698 mV、FF 52.5%、PCE 7.83%。
- 単独時:Z907=5.08%、SQ2=1.39% → 共増感で大幅アップ。
- 再結合抑制・I⁻/I₃⁻との競合吸収低減・凝集抑制の相乗効果が要因。
やさしい解説
“万能選手のZ907”に“赤取りのSQ2”を足すと、弱かった波長帯が埋まり電流が増加。チーム戦の勝ちパターンです。
参考(DOI)
Younas et al., Int. J. Energy Res. 42 (2018) 3957–3965. DOI: 10.1002/er.4154
3) p型(NiO)では“色素の相性”が効く(J. Solid State Electrochem., 2015)
どんな研究?
- **p型DSSC(NiO光電極)**で、N719/Black dye/SQ2/P1を比較。
- 300–500 nmのNiO固有の光応答域では、SQ2やN719はむしろ効率を下げる一方、P1だけが量子効率を向上(最大21%)。
- 電気化学インピーダンスから、再結合と効率が直結することを実証。
やさしい解説
n型(TiO₂)で“攻めの一手”のSQ2も、p型(NiO)では守りが弱くなる場面がある、という話。**セルのタイプに合わせた“色素の役割分担”**が肝心です。
参考(DOI)
Sheehan et al., J. Solid State Electrochem. 19 (2015) 975–986. DOI: 10.1007/s10008-014-2703-9
使いどころのコツ(一般向けまとめ)
- n型TiO₂の王道は“共増感”:SQ2で赤〜近赤外の底上げ、相方(JH‑1やZ907など)で残りの帯域を埋める。
- 定量設計:比率(例:60:40)・濃度・吸着時間、**TiO₂の厚み(例:6 µm)**を最適化。
- p型は注意:NiOでは色素や電解質との相性で再結合が増えるケースも。実測で見極めを。
よくある質問(FAQ)
Q. SQ2単体だと効率が低い?
A. 赤寄り特化のため単独では電圧・電流が伸びにくいことがあります。共増感で**“広帯域×相乗効果”**を狙うのが定石。
Q. フレキシブル基板でも大丈夫?
A. 低温プロセスのTiO₂や薄膜最適化次第で、6%超級の例が報告されています。
Q. 室内光にも効く?
A. 赤〜可視後半の吸収強化は室内LED/蛍光灯でも有利。IoT向け電源に相性◎です。
出典(本文は下記3本をベースに一般向けに再構成)
- Lee, H. et al., “Co-sensitization of metal-free organic dyes in flexible DSSCs,” Organic Electronics 52 (2018) 103–109. DOI: 10.1016/j.orgel.2017.10.003
- Younas, M. et al., “Cosensitization of Z907 and SQ2,” Int. J. Energy Res. 42 (2018) 3957–3965. DOI: 10.1002/er.4154
- Sheehan, S. et al., “p-DSC on NiO: dyes including SQ2,” J. Solid State Electrochem. 19 (2015) 975–986. DOI: 10.1007/s10008-014-2703-9

