論文要約:OLED exciplex Selected Papers 2025.10.12

やさしく解説:OLED × エキサイプレックス(Exciplex)ってなに?(3本の論文から)

作成日:2025-10-12 / 対象:一般向け解説

まずは1分で

  • **エキサイプレックス(exciplex)**は、2種類の分子が“光っている間だけ”ゆるく結びついた状態で出す光のこと。
  • OLEDでは、**ドナー(電子を渡す)アクセプター(電子を受け取る)**を組み合わせると、低電圧で明るく・色を調整しやすい発光ができる。
  • さらに、**TADF(熱活性化遅延蛍光)**と相性が良く、高効率・長寿命の両立に役立つ。

1) 「TADF × エキサイプレックス」の関係(やさしく)

エキサイプレックスは分子A(ドナー)+分子B(アクセプター)の組み合わせでできる“ペア発光”。このペアは、三重項→一重項へ戻りやすい(ΔE_STが小さくなる)設計にしやすく、TADFと組み合わせると電気を光へ無駄なく変えやすいのがポイント。

  • 直感的には、色(波長)はペアの設計で調整でき、必要な電圧(V_on)も低めにしやすい。
  • ロールオフ抑制(明るくしても効率が落ちにくい)や材料コストの低減にも寄与。

2) 代表研究①:TADFの大枠とエキサイプレックス発光

ポイント

  • TADFの総説の中で、エキサイプレックス発光体エキサイプレックス型ホストが幅広く整理。
  • ドナー/アクセプターの選び方で、青~赤までの色効率・安定性を最適化する考え方を紹介。

なにが分かる?(一般向け)

  • 2つの分子の相性」で光の性質が変わる。
  • 金属を使わない有機材料だけでも高効率を狙える道が見える。

出典

  • Wong & Zysman-Colman, Advanced Materials (2017). DOI: https://doi.org/10.1002/adma.201605444

3) 代表研究②:インクで塗って作るOLEDでもTADF+Exciplexは使える?

ポイント

  • **塗布型(solution process)**で作るOLEDにおけるTADF材料の進展をレビュー。
  • ここでエキサイプレックス“型”ホストの活用が取り上げられ、大面積・低コスト化との相性が議論される。

なにが分かる?(一般向け)

  • スマホのような蒸着だけでなく、“塗って作る”方式でも、エキサイプレックスの利点(低電圧・高効率)を活かせる可能性。
  • 量産や大型化を見据えた現実的な道筋。

出典

  • Huang, Jiang & Duan, J. Mater. Chem. C (2018). DOI: https://doi.org/10.1039/c8tc01139g

4) 代表研究③:長寿命化に効く“エキサイプレックス共ホスト”

ポイント

  • エキサイプレックスを作る“共ホスト(co-host)”が、TADF-OLEDの寿命改善に効くという視点。
  • 効率(EQE)だけでなく、長く使えるデバイスに向けて**発光層の環境を“優しくする”**役割が示される。

なにが分かる?(一般向け)

  • 明るいだけでなく、長く使えるOLEDにするには、発光分子の周り(ホスト)を整えるのが重要。
  • エキサイプレックス共ホストは、**発光のムダや劣化の原因を減らす“クッション”**の役割を果たせる。

出典

  • Jeon et al., Advanced Materials (2019). DOI: https://doi.org/10.1002/adma.201803524

5) どう作るの?(超かんたん設計の考え方)

  • 分子の組み合わせ:電子を渡す“ドナー”と受け取る“アクセプター”を選ぶ。
  • 色の調整:ペアの相性で**色(波長)**が変わる。緑~赤は作りやすく、青は設計が難しいが研究が進行中。
  • TADFと併用ΔE_STを小さくできるペアを選ぶと、**熱で再び光る回路(RISC)**が回りやすい。
  • 寿命を伸ばすエキサイプレックス共ホストを使って、発光分子への負担を減らす

6) まとめ(一般向け)

  • **Exciplex=“発光中だけできるペア”**で、低電圧・高効率・色設計の自由度が魅力。
  • TADFと組み合わせると、レアメタルに頼らずに高効率・長寿命へ近づける。
  • 塗布プロセスとの相性もよく、大面積・低コスト化の現実解として期待。

参考文献(本文で紹介した3本)

  1. Wong, M. Y.; Zysman-Colman, E. Advanced Materials (2017). DOI: https://doi.org/10.1002/adma.201605444
  2. Huang, T.; Jiang, W.; Duan, L. Journal of Materials Chemistry C (2018). DOI: https://doi.org/10.1039/c8tc01139g
  3. Jeon, S. K.; Lee, H.; Yook, K. S.; Lee, J. Y. Advanced Materials (2019). DOI: https://doi.org/10.1002/adma.201803524