この記事で分かること
– DSSCの性能指標 Jsc / Voc / FF / η の意味
– IVカーブのどこを見ればよいか
– 値が低いときに「どこを疑うべきか」の当たりを付ける方法
導入
色素増感太陽電池(DSSC)の性能は、主に Jsc(短絡電流密度)、Voc(開放電圧)、FF(フィルファクター) の3つで決まります。変換効率 η はこの3つの掛け算で決まり、どれか1つが低いと効率は伸びません。本記事では、IVカーブ(電流‐電圧特性)を使って、Jsc/Voc/FF/ηの意味と、どこを改善すればよいかを整理します。
まず結論(要点)
- η(効率)≈ Jsc × Voc × FF(入力光が一定なら、取り出せる最大出力に比例)
- Jsc:光からどれだけ電流を取り出せたか(吸収・注入・再結合の影響が大きい)
- Voc:どこまで電圧が出るか(再結合の強さで左右されやすい)
- FF:IVカーブの“角の立ち具合”(抵抗・対極反応・拡散などで落ちる)
1. IVカーブとは?
IVカーブは、光照射下での 電圧 V(V) と 電流密度 J(mA/cm²) の関係を表すグラフです。
比較するときは、測定条件(AM1.5/室内光、温度、マスク面積など)を揃えるのが基本です。
- 縦軸:電流密度 J (mA/cm²)
- 横軸:電圧 V (V)
- 図中の Jmax / Vmax は最大出力点(MPP)での値(文献では Jmp/Vmp と表記することもあります)
図1|DSSCのIVカーブ模式図。
短絡電流密度 Jsc(V=0)と開放電圧 Voc(J=0)を示す。曲線上の最大出力点(MPP)では Pmax = Vmax × Jmax。フィルファクターは FF = (Vmax×Jmax)/(Voc×Jsc) で定義される。
2. Jsc(短絡電流密度)とは?
Jscは、電圧を0にしたとき(短絡状態)に流れる電流密度です。
直感的には「光からどれだけ電子を作って回路に流せたか」の指標です。
Jscが上がりやすい要因
- 色素の光吸収が増える(吸収帯の拡大、共増感など)
- TiO₂への電子注入が効率的
- 再結合が抑えられて集電できる
- 光捕集(膜構造・散乱など)が良い
Jscが下がる“ありがち原因”
- 色素凝集で注入が落ちる/再結合が増える
- TiO₂表面欠陥が多い
- 電解液・界面で電子が失われる(再結合)
3. Voc(開放電圧)とは?
Vocは、電流が0のとき(開放状態)の電圧です。
直感的には「電子が溜まれる余地があるか(=再結合しにくいか)」に強く関係します。
Vocが上がりやすい要因
- 再結合が抑えられている(TiO₂表面・電解液界面の改善)
- 電解液(レドックス)の設計が適切
- 界面処理・添加剤で電子の漏れを減らす
Vocが低い“ありがち原因”
- 再結合が強い(表面欠陥、吸着状態、電解液条件)
- 封止不良・劣化で界面が乱れる
4. FF(フィルファクター)とは?
FFはIVカーブの“角の立ち具合”を表す指標で、
「理想的に取り出せる最大電力にどれだけ近いか」を示します。
図1の最大出力点(MPP)では、電圧 Vmax、電流密度 Jmax となり、最大出力は Pmax = Vmax × Jmax。
フィルファクターは FF = (Vmax×Jmax)/(Voc×Jsc) で定義されます。
(※文献によって Vmp/Jmp と表記することもありますが、本記事では Vmax/Jmax で統一します。)
FFが落ちる主因(DSSCで重要)
- 直列抵抗が大きい(電極・配線・接触)
- 対極反応が遅い(触媒性能が不足)
- 電解液拡散が遅い(粘度・構造)
- 内部損失が大きい(リーク、短絡気味)
5. 変換効率 η はどう決まる?
入力光強度 Pin が一定なら、最大出力 Pmax は Jsc × Voc × FF に比例します。
- η = (Jsc × Voc × FF) / Pin
つまり、効率を上げたいときは
「Jscを上げる」「Vocを上げる」「FFを上げる」のどれを狙うかを、測定結果から決めます。
6. どこを改善する?(簡易診断)
- Jscが低い → 光吸収、注入、凝集、再結合を疑う
- Vocが低い → 再結合(界面・表面処理・電解液)を疑う
- FFが低い → 抵抗、対極触媒、電解液拡散、リークを疑う
FAQ
Q. JscとVocはトレードオフですか?
A. 条件によっては見かけ上そう見えることがあります。光吸収を増やしてJscが上がっても、再結合が増えるとVocが下がる場合があるためです。重要なのは「再結合を増やさずにJscを上げる」設計です。
Q. FFが低いとき、まず何を疑えばいい?
A. まずは直列抵抗(配線・接触)と対極触媒(Pt/カーボン等)の性能、電解液の粘度・拡散をチェックすると原因に当たりやすいです。
次に読む(DSSCまとめ)
- DSSC超入門まとめ(仕組み・材料・色素・測定)
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