DSSCの共増感(co-sensitization)とは?狙い・設計・注意点をやさしく解説

この記事で分かること
– 共増感(co-sensitization)の基本アイデア
– 何が改善されやすいか(Jsc/Voc/FFのどこに効く?)
– 失敗しやすいポイント(凝集・吸着競合・再結合)と対策

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関連:性能指標(Jsc/Voc/FF/η)
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導入

DSSC(色素増感太陽電池)では、色素が光を吸収してTiO₂へ電子を注入することで発電します。単一色素でも高性能化は可能ですが、吸収できる波長域には限界があります。そこで用いられる戦略の1つが 共増感(co-sensitization)です。
共増感は、複数の色素を組み合わせて吸収帯を広げることを狙いますが、単純に「色素を2種類混ぜれば良い」わけではありません。この記事では、共増感の狙いと設計の考え方、失敗パターンを整理します。


まず結論(要点)

  • 共増感の狙いは 吸収帯の補完 → IPCEとJscの底上げ
  • 一方で、吸着競合・凝集・再結合増加により VocやFFが悪化することもある
  • 成功の鍵は ①吸収の相補性 ②吸着バランス(表面占有) ③再結合の抑制 の3点

1. 共増感とは?(何をしている?)

共増感は、TiO₂表面に 異なる吸収特性を持つ色素を複数吸着させ、より広い波長域の光を電流に変える考え方です。

  • 色素A:可視の一部を強く吸収
  • 色素B:Aが吸収しない領域(例:長波長側)を補う
    → 2つを組み合わせて、スペクトルの“穴”を埋める

📌

図(任意):吸収スペクトルの補完図
色素AとBの吸収を重ね、共増感で吸収域が広がるイメージを示すと伝わりやすいです。


2. 何が良くなりやすい?(どの指標に効く?)

共増感が効くとき、まず改善しやすいのは IPCEJsc です。

  • IPCE:吸収できる波長域が増えれば、波長ごとの電流が増える可能性
  • Jsc:結果として積算電流が増えやすい

👉 指標の意味:
https://haralab.com/dssc-jsc-voc-ff/


3. 失敗しやすいポイント(共増感の落とし穴)

3-1. 吸着競合(片方が載らない/置換される)

TiO₂表面の吸着サイトは限られます。
色素AとBの吸着力や濃度、浸漬順序によって、片方がほとんど載らないことがあります。

対策の方向性
– 順次吸着(A→B、またはB→A)を試す
– 濃度・時間を振って“載り方”を調整
– 吸着量を吸収スペクトルで確認する

3-2. 凝集(吸収は増えたのに発電しない)

共増感で表面が過密になったり、分子間相互作用が増えたりすると、凝集が起こりやすくなります。
吸収は増えても、注入が落ちたり再結合が増えたりして性能が伸びないことがあります。

👉 凝集対策:
https://haralab.com/dssc-dye-aggregation/

3-3. 再結合増加(Vocが下がる)

吸着状態が変わると、電解液側への電子の漏れ(再結合)が増える場合があり、Vocが下がることがあります。
Jscが上がっても、Vocが下がると総合効率は伸びません。


4. 成功しやすい設計の考え方(チェックリスト)

共増感を設計するときのチェックポイントです。

チェック1:吸収の“相補性”があるか?

  • 色素AとBの吸収が、同じ場所に重なりすぎていない
  • Aが弱い領域をBが補っている(またはその逆)

チェック2:吸着バランスを作れているか?

  • 吸着量のバランス(Aだけ/ Bだけになっていない)
  • 吸着順序(同時吸着 vs 順次吸着)で最適化できる

チェック3:再結合が増えていないか?

  • Vocが落ちていないか
  • EISなどで再結合指標が悪化していないか

5. 最短で評価する測定セット

1) 吸収スペクトル(電極):載り方・相補性・凝集の兆候
2) IPCE:波長ごとの寄与(共増感の効果が出たか)
3) IVJsc/Voc/FF/ηの総合評価
(必要に応じて)EIS:抵抗・再結合の切り分け

👉 測定の読み方:
https://haralab.com/dssc-measurement/


FAQ

Q. 共増感は“混ぜるだけ”でいいですか?
A. 多くの場合、混ぜるだけでは最適化が不十分です。濃度・浸漬時間・吸着順序で「載り方」を作る必要があります。

Q. 共増感でJscが上がったのに効率が上がりません。なぜ?
A. VocやFFが下がっている可能性があります。再結合増加や抵抗増が起きていないか、IVとEIS/IPCEで確認します。


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