DSSCの電解液とは?I⁻/I₃⁻系とCo系(コバルト錯体)の違いをやさしく解説

この記事で分かること
– DSSCで電解液(レドックス対)が何をしているか
– 代表的な I⁻/I₃⁻系Co系(コバルト錯体) の考え方の違い
Jsc/Voc/FFにどう効きやすいか(ざっくりの傾向)

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導入

DSSC(色素増感太陽電池)は、色素が光を吸収してTiO₂へ電子を注入することで発電します。しかし、注入されたあとに色素は「酸化状態」になり、そのままでは次の光反応を繰り返せません。そこで重要なのが 電解液(レドックス対) です。
電解液は、酸化された色素を再生し、デバイス内の反応循環を回す役割を担います。この記事では、代表的な I⁻/I₃⁻系Co系(コバルト錯体) を中心に、違いと選び方の考え方をまとめます。


まず結論(要点)

  • 電解液は 色素再生対極での反応 を担い、DSSCの“循環”を成立させる
  • I⁻/I₃⁻系は扱いやすく実績が多いが、条件によってはVocの伸びに限界が出ることがある
  • Co系はVoc向上が期待される設計もある一方で、拡散・反応・安定性など最適化が必要
  • 最終的には IV(Jsc/Voc/FF/η)+安定性 で判断する。

1. 電解液(レドックス対)の役割

1-1. 色素を再生する

光で励起された色素は電子をTiO₂へ注入すると、色素は酸化状態になります。
電解液はこの酸化色素に電子を与えて、元の状態に戻す(再生)役割です。

1-2. 対極で電解液を再生する

電解液側も、色素再生で酸化/還元状態が変わるため、対極(Ptやカーボンなど)で反応が進み、電解液自体が再生されます。
この循環が回って初めて、DSSCは連続発電します。


2. I⁻/I₃⁻系(ヨウ素系):定番レドックス対

I⁻/I₃⁻系は、DSSCの代表的な電解液系として広く使われてきました。

特徴(ざっくり)

  • 実績が多く、比較的扱いやすい
  • 対極(Pt等)での反応が進みやすい条件が多い
  • ただし条件によっては、Vocの最適化に限界が見える場合がある

どの指標に効きやすい?

  • Jscは色素・TiO₂・光捕集にも強く依存するため「電解液だけ」で決まらない
  • Vocは再結合やレドックス電位などが関係し、電解液設計の影響が出やすい

3. Co系(コバルト錯体):Voc設計の自由度を狙う

Co系(コバルト錯体)レドックス対は、ヨウ素系とは異なる設計思想で導入されることがあります。

特徴(ざっくり)

  • Vocの向上が期待される設計が可能な場合がある
  • 一方で、拡散・反応速度・界面挙動の最適化が必要になりやすい
  • 電解液組成や添加剤、対極材料との相性が重要

どの指標に効きやすい?

  • Vocを狙った設計が話題になることが多い
  • ただし、拡散や反応の問題が出るとFFやJscに影響することもある

4. ざっくり比較(初心者向け)

観点 I⁻/I₃⁻系 Co系(コバルト錯体)
位置づけ 定番・実績豊富 Voc設計の自由度を狙う選択肢
最適化の難しさ 比較的取り組みやすいことが多い 条件最適化が必要になりやすい
注意点 条件によりVocが伸びにくい場合 拡散・反応・相性(対極/添加剤)

※実際の優劣は、色素・TiO₂・対極・封止などの条件とセットで決まります。


5. 電解液を変えたら、何を測ればいい?

最短で判断するなら、次のセットが有効です。

1) IVJsc/Voc/FF/ηの変化
2) EIS:抵抗・再結合の相対比較
3) 安定性試験:劣化の出方(封止・水分・熱)

👉 測定の読み方:
https://haralab.com/dssc-measurement/
👉 安定性:
https://haralab.com/dssc-stability/


FAQ

Q. 電解液を変えると、色素も変えるべきですか?
A. 場合があります。色素再生のしやすさや界面挙動の相性があるため、電解液だけでなく「色素・添加剤・対極」とセットで最適化するのが一般的です。

Q. まずどちらから試すべき?
A. 目的次第です。再現性よく基準を作りたいならI⁻/I₃⁻系で“基準セル”を確立し、次にCo系などでVoc向上を狙う、という進め方が安全です。


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