DSSC(色素増感太陽電池)の作り方:超入門(簡易セルの手順と失敗しないコツ)

注意(安全)
ここでは教育・研究の入門として「流れ」と「注意点」をまとめます。使用する化学薬品・溶媒・加熱工程は、所属機関の安全ルールに従い、適切な保護具(手袋・保護眼鏡等)と換気の下で実施してください。

関連:DSSC超入門まとめ(全体像)
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関連:TiO₂膜(厚み・焼成)
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関連:測定(IV・IPCE・EIS)
https://haralab.com/dssc-measurement/
関連:封止(シール)
https://haralab.com/dssc-sealing/


この記事で分かること

  • DSSCを作る全体の流れ(10ステップ)
  • 失敗しやすいポイントと、最短での切り分け
  • 初心者がまず揃えるべき“最低限の材料”の考え方

全体の流れ(10ステップ)

DSSC(簡易セル)は、以下の流れで作ります。

1) FTOガラスの洗浄
2) TiO₂ペースト塗布(作用極)
3) 乾燥・焼成(シンタリング)
4) (任意)TiCl₄処理など表面処理
5) 色素溶液に浸漬(色素吸着)
6) 対極(Pt/カーボン)作製
7) セルの貼り合わせ(スペーサー/封止)
8) 電解液注入
9) 注入口の封止
10) IV測定(必要に応じてIPCE/EIS)


1) FTOガラスの洗浄(最重要:ここで差が出る)

目的

  • 油分・汚れを落とし、導電膜表面を再現よくする

失敗例

  • 指紋・油分が残り、TiO₂膜の密着や電極接触が不安定になる

コツ

  • 洗浄後はなるべく触らない(端を持つ)
  • 乾燥・保管も清浄に

2) TiO₂ペースト塗布(作用極)

目的

  • 色素を大量に載せる“多孔質膜”を作る

失敗例

  • 塗布ムラ、クラック、厚すぎ/薄すぎ

コツ

  • まずは一定条件で「基準膜」を作る
  • 厚みは“光捕集”と“損失”のバランス

👉 膜厚・焼成の考え方:
https://haralab.com/dssc-tio2/


3) 乾燥・焼成(シンタリング)

目的

  • 粒子同士の接続(電子の道)を作り、有機成分を除去する

失敗例

  • 焼成不足 → FF低下、抵抗増、再現性低下
  • 焼成過多 → クラック、基板ダメージ等(条件依存)

4) (任意)表面処理(例:TiCl₄処理)

目的

  • 表面状態を整え、電子輸送や再結合抑制に寄与する場合がある

※処理条件は研究室・目的で大きく変わるので、まずは「無し」で基準を作るのがおすすめです。


5) 色素吸着(浸漬)

目的

  • TiO₂表面に色素を吸着させ、光吸収と電子注入の“起点”を作る

失敗例

  • 吸着量不足 → Jsc低下
  • 色素凝集 → 注入低下/再結合増加 → Jsc/Voc悪化

👉 凝集の考え方:
https://haralab.com/dssc-dye-aggregation/


6) 対極(Pt/カーボン)作製

目的

  • 電解液側の反応(レドックス再生)を進める触媒電極

👉 対極の基本:
https://haralab.com/dssc-counter-electrode/


7) セルの貼り合わせ(スペーサー/封止)

目的

  • セルギャップ(電解液層)を確保し、漏れ・吸湿を防ぐ

失敗例

  • 気泡、端部の隙間 → 漏れ・劣化・再現性低下

👉 封止の基本:
https://haralab.com/dssc-sealing/


8) 電解液注入

目的

  • 色素再生を回す(DSSCの循環を成立させる)

👉 電解液の基本:
https://haralab.com/dssc-electrolyte/


9) 注入口の封止(最後の落とし穴)

  • 注入口の封止が甘いと、時間とともに性能が落ちやすい
  • “作ってすぐ良い”のに“翌日落ちる”タイプはここが原因のことがあります

10) 測定(IV → IPCE/EIS)

まずはIVでJsc/Voc/FF/ηを確認し、必要に応じてIPCEやEISで原因を絞ります。

👉 測定の読み方:
https://haralab.com/dssc-measurement/


失敗しないための最短チェック(症状→原因)

  • Jscが低い:色素吸着不足、膜が薄い、凝集、光捕集
  • Vocが低い:再結合増(界面・水分侵入)
  • FFが低い:焼成不足、接触抵抗、対極反応、封止不良
  • 翌日落ちる:封止・漏れ・吸湿を疑う

FAQ

Q. 初心者がまず揃えるべき材料は?
A. まずは「基準セル」を作れる最小セット(FTO、TiO₂ペースト、基準色素、基準電解液、対極材料、封止材料)を揃え、条件を固定して再現性を作るのがおすすめです。

Q. どこから改善すれば良い?
A. まず“基準セル”の再現性を作り、IVで弱点(Jsc/Voc/FF)を見て、1要因ずつ潰していくのが最短です。


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