DSSCはなぜ室内光で強い?低照度で発電しやすい理由とポイント

この記事で分かること
– 「室内光で強い」と言われる理由(誤解しやすい点も含む)
– AM1.5(太陽光)と室内光の違いがDSSCに与える影響
– 低照度条件で性能を上げるための設計・評価のポイント

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導入

DSSC(色素増感太陽電池)は「室内光(低照度)でも発電しやすい」と紹介されることがあります。これは一部の条件で事実ですが、どんなDSSCでも自動的に室内で高効率になるわけではありません。
この記事では、室内光で有利になりやすい理由を、光源スペクトルや損失(再結合・抵抗)との関係で整理し、低照度評価のコツをまとめます。


まず結論(要点)

  • 室内照明は 光強度が弱く、スペクトルも太陽光と違うため、材料の相性で性能が大きく変わる
  • 低照度では、損失(再結合・抵抗)の見え方が変わり、FFやVocが相対的に有利になる条件が出ることがある
  • 低照度で伸ばすには、色素の吸収スペクトルを照明に合わせることと、再結合抑制・抵抗低減が重要

1. 室内光と太陽光は何が違う?

1-1. 光強度(照度・放射照度)が違う

  • 太陽光(AM1.5):非常に強い
  • 室内照明:太陽光に比べて桁違いに弱い(低照度)

そのため室内では、Jscは小さくなりがちですが、同時に損失の支配項が変わることがあります。

1-2. スペクトル(色)が違う

室内照明(LED、蛍光灯など)は、太陽光と比べてスペクトル形状が異なります。
つまり、色素の吸収が照明スペクトルと合っているかが効きやすくなります。


2. なぜ低照度で“有利”になることがあるのか?

2-1. 再結合と電荷密度の関係

強い光では、TiO₂中の電子密度が高くなり、再結合が増えやすい条件が出る場合があります。
一方、弱い光では電子密度が低く、再結合が相対的に抑えられ、VocやFFが極端に落ちにくい条件が現れることがあります。

ただし、これは材料・界面・電解液系に依存します。

2-2. 抵抗損失の見え方が変わる

電流が小さい低照度条件では、直列抵抗による電圧損失が相対的に小さく見える場合があります。
結果として、FFが見かけ上改善したように見えることがあります。


3. 低照度で性能を上げるポイント(設計)

3-1. 色素の吸収を“照明”に合わせる

  • 室内照明で強い波長域を拾える色素設計・選択
  • 共増感で吸収帯を調整
  • 凝集を抑えて、吸収が「発電」に効く状態にする

👉 凝集対策:
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3-2. 再結合を抑える(Vocの底上げ)

  • TiO₂表面・界面のパッシベーション
  • 電解液組成の最適化
  • 吸着状態(密度・配向)を整える

3-3. 抵抗を下げる(FFの確保)

  • 電極・配線・接触抵抗の低減
  • 対極触媒(Pt/カーボン等)と電解液の拡散性
  • セル構造(スペーサー、封止)由来の抵抗増を避ける

4. 低照度評価のコツ(実験・比較の落とし穴)

低照度評価では「条件の違い」が結果に直結するため、比較条件を揃えることが特に重要です。

4-1. まず揃える条件(最低限)

  • 光源の種類(LED/蛍光灯)と照度(lux)
  • スペクトル情報(可能なら)
  • セル面積(マスク)
  • 温度
  • IV掃引条件(速度・方向)

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4-2. “室内で高効率”の見方

室内光では入力光が小さいため、効率の定義や比較が混乱しやすいです。
– 入力光の扱い(照度→放射照度換算など)
– どの照明条件での結果か(再現性)
をセットで示すと、読み手に伝わりやすくなります。


5. よくある質問(FAQ)

Q. DSSCは室内なら必ずシリコンより良い?
A. そうとは限りません。照明スペクトルやデバイス設計次第です。DSSCが有利になりやすい条件はありますが、比較は同条件で行う必要があります。

Q. 低照度でVocが上がることはありますか?
A. 低照度で再結合が相対的に抑えられ、Vocの低下が小さく見える場合があります。

ただし材料・界面条件に依存します。


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