色素増感太陽電池(DSSC)とは?仕組みを図でやさしく解説(初心者向け)

この記事で分かること
– DSSCが発電する基本原理(5ステップ)
– どの材料が何をしているか(TiO₂・色素・電解液・対極)
– 「なぜ室内光で強い?」など、よくある疑問への答え

関連:性能指標(Jsc/Voc/FF/η)
https://haralab.com/dssc-jsc-voc-ff/


導入

色素増感太陽電池(DSSC: Dye-Sensitized Solar Cell)は、色素が光を吸収して電子を生み出し、電気に変えるタイプの太陽電池です。シリコン太陽電池とは仕組みが異なり、酸化物半導体(多くはTiO₂)の表面に色素を吸着させ、電解液(または固体材料)で色素を再生させながら発電します。
本記事では、DSSCの仕組みを「できるだけ少ない前提知識」で理解できるように整理します。


まず結論(要点)

  • DSSCは 「色素が光吸収 → TiO₂へ電子注入 → 外部回路 → 色素再生 → 電解液再生」 の循環で発電する
  • 性能は主に Jsc(電流)・Voc(電圧)・FF(曲線形) で決まり、改善策はそれぞれ違う
  • 実験で差が出やすいのは 色素吸着(量・状態)界面での再結合、そして 封止(安定性)

1. DSSCの構造(どんな層でできている?)

代表的なDSSCは、次の要素でできています。

  • 透明導電膜(FTO/ITO):電流を集める電極(ガラス基板が多い)
  • TiO₂多孔質膜(酸化物半導体):電子が流れる“道”+色素の足場
  • 色素(Dye):光吸収と電子供給(注入の起点)
  • 電解液(酸化還元対):色素を再生させる役(I⁻/I₃⁻やCo錯体など)
  • 対極(Pt、カーボンなど):電解液側の反応を進める触媒電極
  • 封止材:電解液の漏れ・水分/酸素侵入を防ぎ、寿命を左右する

📌

図1 DSSCの模式図


2. DSSCの発電原理(5ステップ)

DSSCの動きは、次の5ステップに整理できます。

1) 光吸収:色素が光を吸収して励起状態になる
2) 電子注入:励起色素からTiO₂へ電子が移動(注入)する
3) 外部回路を流れる:電子が透明電極→外部回路→対極へ流れて仕事をする
4) 色素再生:酸化された色素が、電解液から電子をもらって元に戻る
5) 電解液の再生:対極で触媒反応が進み、電解液が再生される(循環が閉じる)

ポイント:DSSCは「色素が光を吸って終わり」ではなく、再生反応が回って初めて継続発電します。


3. “なぜ色素が必要?”(シリコン太陽電池との違い)

シリコン太陽電池では、材料自体(シリコン)が光を吸収して電子と正孔を作ります。
一方DSSCでは、TiO₂は主に電子を運ぶ役で、光を吸収する役は色素が担います。

  • TiO₂:電子輸送・表面積(多孔質で色素を大量に載せられる)
  • 色素:光吸収と電子供給(注入の起点)

この分業により、色やデザインの自由度が高いという特徴につながります。


4. 性能が決まる“ボトルネック”はどこ?

初心者がまず押さえるべき代表的なボトルネックは次の3つです。

4-1. 色素吸着(量と状態)

  • 吸着量が少ない → 光を拾えない → Jscが伸びない
  • 色素が凝集する → 注入低下/再結合増加 → Jsc/Vocが悪化する場合がある

4-2. 再結合(電子の“漏れ”)

TiO₂に入った電子が、外部回路へ行く前に電解液側へ戻ってしまう現象(損失)。
再結合が強いと、とくに Vocが下がりやすいです。

4-3. 抵抗・対極反応(FFに効く)

配線・接触抵抗、対極触媒の性能、電解液拡散が悪いと、IVカーブが丸くなり FFが落ちることがあります。

👉 性能指標の読み方は、こちらが先にあると理解が速いです:

DSSCのJsc・Voc・FF・変換効率ηを図で理解する(初心者向け)


5. よくある質問(FAQ)

Q. DSSCはなぜ室内光で強いと言われる?
A. 色素の吸収特性やデバイス設計によって、弱い光でも電流が出やすい場合があります(ただし材料・条件に依存します)。室内照明のスペクトルに合う色素設計や、再結合抑制が効くことがポイントです。

Q. 電解液はなぜ必要?固体化できる?
A. 電解液は「酸化された色素を再生する」ために重要です。固体化(固体電解質/ホール輸送材料)も研究が進んでおり、漏れの低減や安定性向上が期待されますが、界面抵抗や輸送の課題もあります。

Q. DSSCの弱点は?
A. 代表例は長期安定性(封止、水分/酸素、光・熱劣化)です。実用に向けては封止・材料選定・構造設計が重要です。


次に読む(DSSCまとめ)


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