DSSCの測定(IV・IPCE・EIS)の読み方:初心者向けチェックポイント

この記事で分かること
– DSSCでよく使う測定 IV / IPCE / EIS の役割
– どの値を見れば「どこが悪いか」の当たりが付くか
– まず揃えるべき測定条件(比較の落とし穴)

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導入

DSSC(色素増感太陽電池)の改善では、闇雲に条件を変えるより、測定結果からボトルネックを絞る方が早く進みます。基本となるのは IV(電流‐電圧特性)IPCE(分光感度)EIS(インピーダンス) の3つです。
この記事では、初心者でも「どこを見れば良いか」が分かるように、ポイントだけをまとめます。


まず結論(要点)

  • IV:最終的な性能(Jsc/Voc/FF/η)を決める“成績表”
  • IPCE:波長ごとに「光が電気に変わっているか」を見る“原因追跡”
  • EIS:抵抗や再結合など“内部の損失”を分解して見る“診断ツール”
  • 比較するときは、条件(光強度、面積、マスク、温度、掃引条件)を揃えるのが最重要

1. IV測定(J–Vカーブ):まずここから

1-1. IVで見るべき4つ

  • Jsc(mA/cm²):短絡電流密度(V=0)
  • Voc(V):開放電圧(J=0)
  • FF:曲線の形(最大出力点の“角”)
  • η:変換効率

👉 指標の意味はこの記事がセットです:
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1-2. よくある落とし穴(比較できない例)

  • セル面積(有効面積)やマスクが違う
  • 光源の強度・スペクトルが違う(AM1.5 vs 室内光)
  • 掃引速度や方向(往復)でヒステリシスが出る
  • 温度が違う(特に電解液系は影響が出やすい)

1-3. IVからの“簡易診断”

  • Jscが低い:吸収不足、注入不足、凝集、再結合
  • Vocが低い:再結合増加(界面・電解液)
  • FFが低い:抵抗増、対極反応、電解液拡散、リーク

2. IPCE(分光感度):吸収が“発電”に効いているか?

IPCE(Incident Photon-to-Current Efficiency)は、波長ごとの「光→電流」効率です。
吸収が増えたのにIPCEが上がらないなら、注入や再結合が疑えます。

2-1. IPCEで見るポイント

  • 立ち上がり波長:どの領域で発電しているか
  • ピーク高さ:最大変換の良し悪し
  • 吸収スペクトルとの一致:吸収しているのに発電していない領域がないか

2-2. ありがちなパターン

  • 吸収は強いのにIPCEが弱い → 凝集・注入低下・再結合を疑う
  • 長波長側だけ弱い → 共増感の組み合わせや吸着バランスを見直す

👉 凝集との関係はこちら:

DSSCで色素が凝集する原因と対策(SQ2・共吸着剤・CD添加)


3. EIS(インピーダンス):抵抗と再結合を“分けて”見る

EISは、交流(AC)信号に対する応答から、内部抵抗や反応抵抗、再結合に関する情報を得る手法です。
(NyquistプロットやBodeプロットで扱われます)

3-1. まず見るべき観点(初心者向け)

  • 高周波側の抵抗:配線・電極・接触などの“直列抵抗”の影響
  • 中〜低周波側の弧(半円):界面反応や再結合に関係
  • 条件(暗/光、バイアス電圧):比較条件を揃える

※EISは解析モデルで結果が変わるので、最初は「相対比較」に使うのが安全です。

3-2. “FFが低い”ときのヒント

  • 直列抵抗が大きいとIVが丸くなり、FFが落ちやすい
  • 対極触媒や電解液拡散が悪い場合も、EIS側に変化が出ることがあります

4. 迷ったらこの順で測る(最短ルート)

1) IV(まず現状のJsc/Voc/FF/ηを確定)
2) 吸収スペクトル(色素吸着量・凝集の兆候)
3) IPCE(吸収が発電に効いているか)
4) EIS(抵抗・再結合の切り分け)


FAQ

Q. まずIVだけで改善できますか?
A. ある程度は可能ですが、原因が複数重なると迷子になりやすいです。IVで「どれが弱いか」を見て、IPCEやEISで原因を絞ると効率が上がります。

Q. IPCEと吸収がズレるのはなぜ?
A. 吸収しても、電子注入や電荷分離がうまくいかないと電流になりません。凝集や界面再結合が原因になることがあります。


次に読む(DSSCまとめ)


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