DSSCの劣化・安定性:原因と対策(封止・水分・酸素・光・熱)

この記事で分かること
– DSSCが劣化する代表的な原因(どこが壊れる?)
– 劣化がJsc/Voc/FFにどう現れやすいか(症状の見方)
– 実験・実装で効く対策(封止・材料選定・保管・測定)

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導入

DSSC(色素増感太陽電池)は、低照度での発電やデザイン性などの利点がある一方で、長期安定性(耐久性)が課題になりやすいデバイスです。とくに液体電解液を用いる系では、封止の不具合・水分や酸素の侵入・光や熱による劣化が性能低下につながります。
この記事では、劣化要因を「どこで何が起きるか」に分けて整理し、対策の考え方をまとめます。


まず結論(要点)

  • DSSCの劣化は 封止(リーク)・水分/酸素・光(UV)・熱 が主要因になりやすい
  • 劣化はIVで Jsc低下として現れることが多いが、再結合増加で Voc低下、抵抗増で FF低下も起こる
  • まずやるべきは 封止の強化保管・測定条件の統一(比較可能にする)

1. 劣化はどこで起きる?(主要ポイント)

DSSCは複数の要素が協調して動くため、劣化ポイントも複数あります。

  • 電解液:揮発、分解、組成変化、溶媒の劣化
  • 色素:光分解、脱離、凝集状態の変化
  • TiO₂/界面:表面状態変化、再結合増加
  • 対極(触媒):触媒活性低下、被毒、接触不良
  • 封止材:リーク、吸湿、接着不良
  • 透明導電膜/配線:腐食、抵抗増

2. 典型的な劣化要因とメカニズム

2-1. 封止不良(電解液リーク・揮発)

  • 液体電解液が漏れる/揮発する
  • レドックス循環が不安定になり、Jsc低下やFF低下につながる

兆候
– 時間とともにIVが全体的に弱くなる
– セル外観の変化(気泡、にじみなど)

2-2. 水分の侵入(最重要)

  • 電解液・界面・色素に影響
  • 再結合増加や電極の劣化を引き起こしやすい

兆候
Voc低下(再結合増)
– EISで界面抵抗や再結合関連の変化が出ることがある

2-3. 酸素の侵入

  • 電荷移動や界面反応に影響し、性能が不安定化することがある
  • 材料によっては酸化劣化の引き金にもなる

2-4. 光(特にUV)による劣化

  • 色素の光分解、電解液分解、封止材劣化
  • TiO₂自体もUV下で反応性が高くなる場合がある

兆候
– IPCEの低下(特定波長域から落ちることも)
– 吸収スペクトルの変化(色素分解・脱離)

2-5. 熱による劣化

  • 電解液揮発、封止材の軟化、界面状態変化
  • 高温環境で加速することが多い

3. 劣化がJsc/Voc/FFにどう出る?(症状ベース)

  • Jscが下がる:吸収低下(色素劣化/脱離)、電解液劣化、リーク、再結合増加
  • Vocが下がる:再結合増加(界面劣化、水分侵入、表面状態変化)
  • FFが下がる:抵抗増(接触不良、配線、対極劣化)、電解液拡散の悪化

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4. 対策(実験でも実装でも効く順)

対策A:封止を強化する(最優先)

  • 封止材・スペーサー・圧着条件の見直し
  • 長期試験前に「リークチェック」を入れる
  • 試験環境(温湿度)を記録して再現性を確保する

対策B:水分・酸素を入れない運用

  • 乾燥環境での作製・保管
  • 保管容器・乾燥剤の活用
  • 開封後の電解液管理(吸湿を避ける)

対策C:UV対策

  • UVカットフィルム/ガラス
  • 測定・保管時に直射日光を避ける
  • 色素・電解液の耐光性を考慮する

対策D:熱対策

  • 高温になる場所での保管を避ける
  • 熱サイクル試験を設計(必要に応じて)
  • 封止材の耐熱性を確認する

5. 最短で“劣化原因”に当たりを付ける測定セット

1) IVJsc/Voc/FF/ηの変化を確認
2) 吸収(電極):色素の脱離・分解の兆候
3) IPCE:波長依存の劣化(色素の寄与)
4) EIS:抵抗・再結合の変化(相対比較)


FAQ

Q. 劣化試験はどのくらいの期間が必要?
A. 目的によります。短期(数日〜数週間)は“初期劣化”の把握に有効で、長期(数か月〜)は封止や材料選定の評価に向きます。まずは条件を固定して再現性を確保するのが重要です。

Q. まず何から手を付ければいい?
A. もっとも効果が出やすいのは封止(リーク・水分侵入)です。次に、保管条件(湿度・温度・光)を揃えて比較可能にします。


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