fbpx

マルチレーザーパルス光を用いた光反応の制御技術の開発

 

「多色多段階レーザー光を用いた光応答性分子の光制御に関する研究」として,分子マシンや光応答性材料を更に,実用的にするために外部刺激側の開発を対象とする。具体的には有機化合物の中からフォトクロミック分子とコントロールしたレーザー光の照射技術との相互作用を検討し,分子マシンなどの実現に向けた研究を行う。しかし,分子マシンなどへの導入は本研究期間では実現不可能なため,喫緊の課題である地球温暖化対応のために、色素増感太陽電池(DSSC)の作製と評価も通じて光制御技術の性能を明示する。

2016年にノーベル化学賞は「分子マシンの設計と合成」に与えられた。この分子マシンは分子機械の重要なパーツ(分子)として,「カテナンとロタキサン」があり,環状化合物が鎖のように絡み合って連結した形状を有する分子集合体と環状(輪っか)分子に棒状の「軸」分子が貫通した構造の分子集合体である。これらを効率よく合成したこと。また,ロタキサンを分子スイッチとして機能させることに成功し,「分子エレベータ」や「分子筋肉(アクチュエーター)」や「超高密度分子メモリ」の創製など示している。また,一方向だけに回転する光駆動型分子モーターを世界で初めて合成し,MHzオーダーで高速回転するモーターを示し,この回転力をマイクロスケールに伝達できることを示している。また,分子モーターを”タイヤ”として持つ「ナノ四駆」などのインパクトのある動画を示している。これらの分子の設計や合成に対して大きな関心があり,世界中の研究者によりナノサイズからマイクロサイズへのボトムアップ型の実社会実現への基礎や応用研究が行われている。

この分子マシンを動かすエネルギー供給源や作用・操作する手法として,酸化還元反応やpH変化,光照射,熱,電気の各作用が用いられている。今後,さらに分子マシンを自走させたり,機能させたりするためにはそれら外部応答刺激との相互作用の解明が不可欠である。その中で,光照射は外部応答刺激として注目される一つの方法である。利点は熱や酸化還元,pH変化などの手法は、分子に対して広い空間を一定条件の環境に固定することが必要であるのに対して,光照射は空間選択的に照射した場所だけに作用(化学反応)させることが可能で,光特性(波長/偏光等)や,光吸収能により機能する場所を選択できる。また,条件設定次第で,熱,酸化還元やpH変化も光照射で空間選択的に生成することが可能である。また,光照射において、近年のレーザーの技術開発が進み,レーザー光の照射に対する操作が一般的になってきた。その代表的な出来事として,2018年のノーベル物理学賞で,レーザー光照射を用いて細胞や微粒子をピンセットでつまむようにして動かす「光ピンセット」の手法の確立の研究が選ばれた。今後もますます,レーザー光を用いた研究がすすむものと確信している。ここで,分子マシンが光応答で機能している条件を改めて考えてみると,その分子マシンを動かすために必要な特定環境が設定されているという事実がある。いわゆる汎用性のある光外部応答刺激の存在は議論の対象にはなっていない。そこで,分子レベルでの光と分子の相互作用において基本的な課題があることに気が付く。

課題①光照射における飽和現象の存在の回避方法の確立。

課題②スイッチングなどでON/OFFの繰り返し反応のみが議論の中心であり、多様性が低い。

課題③具体的なデバイスへの応用研究は発展途上。

これらを克服することにより,本手法などの外部刺激の技術を得て,将来における医療・環境・電子分野などの他分野で,分子マシンの応用的な活躍ができるのではないでないだろうか。