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ジビエ課題@JAPAN

 ジビエの流通を中心として、課題を洗い出してみると「安全・安心」、「安定供給」、「消費者心理」などがあげられる。これはジビエに限ったことではない。食品全般に言えることではあるが、ここでは、ジビエ流通の各部署での課題を挙げて考えてみることにする。

A.安全・安心

 牛や豚などの家畜は「と畜場法」で衛生的なと殺・解体が義務付けられていますが、ジビエの場合、「と畜場法」の対象家畜外で、食品衛生法に基づき、都道府県の「食品衛生法施行条例」の定める施設・設備および衛生管理の基準を遵守することが定められています。この法律に従って、各自治体 では「野生鳥獣食肉衛生管理ガイドライン(北 海道ではエゾシカ衛生マニュアル)」を作成し、 野生鳥獣の食肉施設・加工施設の認証制度等の構築を行っています。

 農林水産省は 2018 年に国産ジビエの利用拡大にあたってジビエが消費者から信頼される食品として流通するように「国産ジビエ認証制度」を立ち上げ、捕獲した野生のシカおよびイノシシの食肉処理施設における自主的な衛生管理の推進など、より安全なジビエの提供と消費者の ジビエに対する安心の確保を図ることを目的として、その制度の普及を推進しています。平成31年2月現在;2施設。

 平成20年2月の「鳥獣による農林水産業等に係る被害防止のための特別措置に関する法律」が施行により、と畜場法の適応を受けないということから、ジビエに関して、既存のと畜場を利用不可もあり、新たな食肉処理施設の建設が必要となり、ここ10年で建設や各種団体が安全・安心に提供できるように課題を一つ一つ克服してきています。

B.安定供給

 狩猟者は有害鳥獣駆除の報奨金などにより、インセンティブを受け、ジビエの獲得(生産)を実施しています。そのため、食肉としての活用においては90%以上廃棄という現実があり、5%の利用率であるという報告もあります。廃棄方法は埋設や焼却が主とされ、数が多くなることにより、場所や費用などの課題が出ています。また、食肉として活用するには捕獲時の獲物に対するストレス軽減技術が求められ、血抜きや内臓摘出(屋内で行うことが原則ですが、一部が屋外でも可能)や運搬時間など個人の技術と消費者目線での肉質への意識の統一が必要になってきています。

 養鹿場などにより、捕獲後育てる試みがあり、漁業やニュージランドなどと同様に実施できる可能性もありますが、現時点では管理・飼育コストの面を考慮し、需給バランスが読みにくい状況のため、供給過剰のリスクも考慮に入れなければならないと考えられ、挑戦的な未知の領域であると考えれます。

 ジビエ処理施設は先に述べたように、と畜法とは別に考慮しなくはいけないため、猟友会や各個人(猟師)で、建設が進められ、281施設が都道府県から農林水産省に報告されているに至っています。これは各都道府県当たり、約5施設があることになります。その実態というと建設費では数千万円が必要であり、特別処置法により補助が出ているケースがあり、活用している施設と独自資金で設置している施設があります。維持管理費に関しては農林水産省関東農政局の平成27年のアンケート結果によると46%が独立採算は可能とありますが、一般的に見て独立採算は厳しいと言わざるをえないと考えられます。

 運搬や肉の流通は牛や豚、鳥とは違い、まだ成熟していないため、科学技術の進展が求められています。施設として採算が合わないところも多くコスト面の軽減が課題であり、生体としての運搬に関しては移動式解体車の導入(全国で数台)などの課題があります。ジビエに限らず、高齢化と人手不足を補うことを目的としたITを活用を課題です。

C.消費者心理

 農林水産統計のホームページに、農林水産省関東農政局が平成31年1月23日に公表した、187名を対象にしたアンケート結果があります。複数回答で「ジビエ料理を食べたくない理由(複数回答)」を71人が答えています。内訳は次のとおりです。

  1. くさみがある・ありそう77.5%
  2. 安全性が不安60.6%
  3. 肉がかたい・かたそう56.3%
  4. 興味が無い33.8%
  5. 値段が高い15.5%
  6. 食べたことのある人から、おいしくないと聞いたから8.5%
  7. その他

 また、野生鳥獣肉の購入やジビエ料理を食べるときに重視することに対して回答者数187人にも行っており、品質面や安全面について、牛や豚、鶏肉などではあまり気にしない課題がでていることがわかります。

 最後に、「情報の非対称性」ということばがあります。上記のような消費者の不安感は提供側と消費者の情報の不一致が原因とされ、肉質に対して、低い評価(安価)となり、反対に安くしても売買が成立しないという例です。これはジビエに限って言えば、「肉」に対する文化的成熟度の問題であり、情報量が歴史的に少ないことに由来していると考えられます。日本ではBSEの問題や鳥インフルエンザ、平生31年冬の豚コレラ(未収束;平成31年2月現在)の問題が発生した時にどのように消費者の安心を回復し、業態全体を復活させ、「安全な肉」を「安心」して食べてもらえるシステムを再構築し、安心されるシステムへ移行してきたか。という課題と同様に感じます。

参考文献

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